英語力の見極め2026-07-08 公開監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

TOEICスコアと実務英語力のギャップ — なぜ高得点でも選考で伝わらないのか

この記事の要点

「TOEIC850点あるのに、面接で全然話せなくて」。こういう声を面談でよく聞きます。率直に言うと、これは珍しいことではありません。TOEICのスコアと、実務で英語を使ってPMとして立ち回る力は、そもそも測っているものが違うからです。

0. 前提 — TOEICは「読む・聞く」、実務は「話す・調整する」が中心

TOEICはリーディングとリスニングを中心に構成されたテストです。一方、PMの実務で求められるのは、会議で発言し、意見の食い違いを調整し、期日について交渉するという、アウトプット中心の英語力です。この違いを理解しないまま「TOEICのスコアを上げれば実務もできるようになる」と考えると、遠回りになります。

0-2. 「読み書き」と「話す・調整する」の間にある壁

もう少し分解すると、TOEICで測られる読解力・聴解力は、契約書やメールを正確に理解する場面では確かに役立ちます。一方で、会議中に相手の発言に即座に反応し、自分の考えを組み立てて口に出す力は別の筋肉です。この2つの筋肉を混同したまま「TOEICのスコアが高いから英語は大丈夫」と思い込んでしまうと、実際の面接や折衝の場で想定外のギャップに戸惑うことになります。

1. なぜ高スコアでも選考で評価されないケースがあるのか

僕が見てきた中で、TOEIC900点近いスコアを持ちながら選考で苦戦した方に共通していたのは、面接で語るエピソードが抽象的だったことです。「英語でのコミュニケーションは得意です」という言葉だけでは、選考官には何も伝わりません。評価されるのは、いつ・どんな場面で・何を英語で調整し・どんな結果になったかという具体の積み重ねです。

1-1. スコアはあくまで「英語という言語の運用能力の目安」であり、PMとしての実務遂行力の証明にはならないという前提を、面接に臨む前に持っておく必要があります。

2. スコアは中程度でも通過する人に共通すること

逆に、TOEICが600〜700点台でも選考を通過する人に共通するのは、「拙くても、要点を英語で伝えきる」姿勢です。文法の正確さより、結論を先に言い、必要な情報を過不足なく伝える構成力が評価されています。この構成力は、日本語での報告・連絡・相談の型がしっかりしている人ほど、英語に転用しやすい傾向があります。

2-1. つまり、実務英語力の土台は、実は日本語での論理的なコミュニケーション力にあるとも言えます。英語だけを鍛えるより、まず日本語での結論ファーストの話し方を整えることが、遠回りに見えて近道になることがあります。

3. 実務英語力を鍛える具体的な方法

実務パートとして、僕がお勧めしているのは次の3つです。①社内の海外拠点との会議に、まずは議事録担当として参加する。②案件の進捗報告を英語で1段落だけ書く練習を週1回続ける。③面接で語りたいエピソードを、結論→理由→具体例→結果の順で英語にしてみる。いずれも1回あたり15〜30分程度で始められ、テキスト学習よりも実践的な力が付きやすい方法です。

3-1. 特に②の「進捗報告を英語で1段落」は、実際の業務に即した練習になるため、面接対策としても直接活きてきます。3ヶ月続けると、語彙の引き出しが目に見えて増えるという声を多くの方から聞いています。

4. コラム — TOEIC500点台から実務英語で評価された方の話

僕が面談したある方は、TOEICのスコアは500点台でしたが、前職で海外ベンダーとのメールのやり取りを担当していた経験がありました。「スコアが低いので応募自体を迷っていました」と話していましたが、実際に職務経歴書にそのメール対応の具体的な内容(発注条件の調整、納期遅延時の対応)を書いたところ、書類選考を通過し、面接でもその経験を軸に語ることで内定を得ています。「点数より、実際に何をやってきたかを丁寧に聞かれました」というのが本人の振り返りです。

5. 面接での「聞き返し」は減点にならない

誤解がないように申し上げると、面接中に聞き取れなかった質問を聞き返すことは、決して大きな減点にはなりません。むしろ、分からないまま曖昧に答えるより、"Could you say that again?"のように率直に聞き返し、正確に理解した上で的確に答える方が、実務でのコミュニケーション姿勢として好意的に評価されることが多いというのが、僕の見てきた実感です。

5-1. 聞き返しのフレーズをいくつか覚えておくだけでも、面接での心理的な余裕は大きく変わります。準備段階でこうした「つなぎのフレーズ」も含めて練習しておくと安心です。

5-2. オンライン面接での聞き返しフレーズの例

実務パートとして、面接前に覚えておくと安心なフレーズを紹介します。"Could you rephrase that?"(別の言い方で説明してもらえますか)、"Just to confirm, you mean...?"(確認ですが、〜という理解で合っていますか)。この2つを使いこなせるだけで、聞き取れなかった瞬間の焦りが大きく減ります。

6. TOEICスコアを取る意味がなくなるわけではない

ここまで実務英語力の重要性を述べてきましたが、TOEICスコアを取ること自体が無意味というわけではありません。多くの求人票で足切りラインとして使われている以上、一定のスコアがなければ選考のテーブルにすら乗れないという現実があります。スコア取得と実務経験の積み上げは、どちらか一方でなく、並行して進めるべきものです。

7. 面接直前の準備で優先すべきこと

面接直前の時間が限られている場合、優先すべきは単語の暗記ではなく、自分の代表エピソードを英語で滑らかに話せるようにしておくことです。同じ話を3回、声に出して練習するだけでも、本番での言葉の出方が大きく変わります。

8. リスニングとスピーキング、どちらを優先すべきか

限られた準備時間の中でどちらを優先すべきか迷う方が多いのですが、僕がお勧めしているのはスピーキングです。理由は単純で、面接の場では「聞かれたことに答える」場面が大半を占めるためです。リスニング力が完璧でなくても、聞き返しながら正確に理解し、こちらの意図を伝えられれば選考は乗り越えられます。逆にスピーキングが弱いと、理解はできていても評価につながる発言ができません。

8-1. 具体的な練習法としては、日々の業務での出来事を、寝る前の5分でいいので英語で声に出して振り返る習慣がお勧めです。文法の正しさより、まず口から英語を出す回数を増やすことが、実務での瞬発力につながります。

9. オンライン英会話サービスの使い方

実務に近い練習として、オンライン英会話サービスでビジネス英語コースを受講する方も多くいます。ただし、日常会話中心のレッスンでは実務直結の力が付きにくいこともあるため、「PMとしての報告・交渉のロールプレイ」をリクエストできる講師を選ぶなど、目的に合わせた使い方が効果的です。

9-1. 週2〜3回、1回25分程度のペースで3ヶ月続けると、多くの方が「言葉に詰まる回数が減った」という変化を実感しています。継続の負荷が低い頻度で始めることが、挫折を防ぐコツです。

(結論)テストのスコアでなく、実務で回した経験が選考を動かす

まとめます。①TOEICと実務英語力は測定対象が異なり、高スコアが選考通過を保証しない。②評価されるのは結論から話す構成力と実務エピソードの具体性。③小さな実務機会の積み重ねが、テキスト学習より効率よく実務英語力を鍛える。

付け加えると、実務英語力は一度身につけたら終わりというものではありません。使わない期間が続くと感覚は鈍りますし、逆に英語を使う機会が増えるほど自然に伸びていきます。焦って一気に完成させようとせず、日々の小さな接触を積み重ねる意識で臨むのが、結果的に一番の近道です。

皆さんいかがでしたでしょうか。まずは15問のグローバルPM診断で、自分の英語運用レベルの現在地を確かめてみてください。では今日もがんばりましょう。

よくある質問

Q. TOEICが高得点でもPM選考で落ちるのはなぜですか

TOEICはリーディングとリスニングを中心に測るテストで、実際の折衝で必要なスピーキングでの論点整理力とは測る対象が異なります。選考ではテストのスコアより、実務で英語を使って何を回せたかという経験の具体性が評価されます。

Q. 実務で使える英語力はどう鍛えればいいですか

単語や文法の学習より、結論から話す型の練習と、実際に英語を使う機会を意図的に作ることが近道です。社内の海外拠点との会議に参加する、英語の議事録を書くなど、小さな実務機会の積み重ねが最も効果的です。

Q. 英語力の証明としてTOEIC以外に何を用意すべきですか

TOEICスコアに加えて、実務で英語を使った具体的なエピソードを職務経歴書と面接で語れるように準備しておくことが重要です。スコアは足切りの通過材料、エピソードは評価を決める材料という役割分担で捉えてください。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

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