キャリアパス2026-07-08 公開監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

国内完結案件からグローバル案件への移り方 — 段階を飛ばさない現実的な手順

この記事の要点

「国内の案件しかやってこなかったので、今からグローバル案件は無理でしょうか」。この質問は面談で本当によく聞きます。結論から言うと、無理ではありません。ただし、いきなり大きく飛躍しようとすると挫折しやすいというのが、僕がこれまで見てきた実感です。

0. 前提 — 「いきなり海外PM」は難易度が高い選択

国内完結案件しか経験がない状態から、いきなり海外拠点常駐のグローバルPMポジションに応募しても、選考通過は簡単ではありません。企業側から見ると、英語での折衝実績も異文化マネジメント経験もない候補者は、実務でのリスクが読めないためです。まず段階を踏むという発想が、遠回りに見えて実は最短ルートになります。

0-2. 「段階を踏む」ことは遠回りではない

ここで強調しておきたいのは、段階を踏むことは決して妥協ではないということです。むしろ、実務経験を伴わないまま大きなポジションに就いてしまうと、期待に応えられず早期に信頼を失うリスクの方が高くなります。着実に積み上げた実績は、後から振り返ったときに一番の強みになります。

1. 第一段階 — 社内の海外拠点連携業務に関与する

最初の一歩としてお勧めしているのは、転職や大きな異動を考える前に、今の会社の中で海外拠点との接点がある業務に自ら関与することです。プロジェクトの一部でも、海外ベンダーとのメールのやり取りでも構いません。小さな接点でも、実際に英語を使った実務経験として職務経歴書に書ける材料になります。

1-1. 実務パートとして、まず自分の所属部署やプロジェクトの中で「海外と関わっている業務」がないか、上司や同僚に聞いてみることから始めてください。10分程度の会話で、思わぬ機会が見つかることがあります。

2. 第二段階 — 海外拠点連携案件のサブ担当を経験する

接点ができたら、次はその案件で少しずつ担当範囲を広げていきます。いきなりリーダーを任されなくても、サブ担当として要件のすり合わせや進捗管理の一部を任せてもらうだけで、実務経験として大きな意味を持ちます。この段階で、英語での折衝経験が少しずつ蓄積されていきます。

2-1. サブ担当として関わる際は、「この経験を今後どう活かしたいか」を上司に伝えておくと、次の機会にもつながりやすくなります。黙って業務をこなすだけでは、周囲はキャリアの意図に気づいてくれません。

3. コラム — 国内SIerから外資系グローバルPMへ移った方の話

僕が面談したある方は、国内SIerで5年間、国内向けの業務システム開発PMとして経験を積んでいました。「海外に興味はあったけれど、経験がなくて自信がなかった」と話していましたが、社内で新設された海外拠点との連携プロジェクトに手を挙げ、まず議事録担当として1年、その後サブPMとして1年関わりました。その実績を職務経歴書にまとめ、外資系企業のグローバルPMポジションに応募したところ、内定を得ています。「振り返ると、いきなり転職していたら通らなかったと思います」というのが本人の言葉です。

3-2. 職務経歴書への反映の仕方

サブ担当としての経験は、どれほど小さくても職務経歴書に明記してください。「海外拠点連携プロジェクトにサブ担当として参画し、要件のすり合わせと進捗管理の一部を英語で担当」といった具体的な記載があるだけで、書類選考での見え方が大きく変わります。経験は書かなければ存在しないものとして扱われてしまいます。

4. 第三段階 — 転職市場での位置づけを確認する

社内での経験を積んだら、転職市場での自分の位置づけを確認する段階に入ります。転職エージェントに、これまでの海外拠点連携経験を伝え、実際にどのレンジの求人に応募できるかを相談してみてください。自分では「まだ早いかも」と思っていても、市場からは十分な水準として評価されることも少なくありません。

4-1. この段階での相談は、必ずしも転職を決意していなくても構いません。「今の実績で市場価値はどれくらいか」を確認するだけでも、次の準備の方向性が明確になります。

4-2. 相談先はエージェント以外にも

市場価値の確認は転職エージェントだけでなく、既にグローバル案件で活躍している知人や、社内の海外経験者に話を聞くという方法も有効です。異なる立場からの視点を集めることで、自分の実績をより客観的に評価できるようになります。

5. 社内異動と転職、どちらを選ぶか

グローバル案件への移行手段として、社内異動と転職のどちらを優先すべきか迷う方も多いです。僕がお勧めしているのは、まず社内に海外連携の機会があるかを確認し、機会が乏しい、あるいは異動の見込みが薄い場合は、転職市場で直接グローバル案件のポジションを探すという二段構えです。どちらか一方に固執せず、両方の可能性を並行して探る姿勢が、機会を逃さないための現実的な構えになります。

5-2. 異動希望が通らない場合の切り替え方

社内での異動希望が長期間通らない場合、それ自体が一つの判断材料になります。会社側の育成方針や海外事業の規模感によっては、社内での機会が構造的に限られていることもあります。その場合は、転職市場に軸足を移す決断も、キャリアを前に進めるための現実的な選択です。

6. 焦って飛躍すると起きやすい失敗

逆に、準備を飛ばしていきなり大きな海外案件に飛び込んだ結果、実務でのギャップに苦しみ、早期に離脱してしまうケースも見てきました。特に、英語での折衝経験がないまま海外拠点常駐のPMポジションに就くと、本社と現地の板挟みで疲弊しやすく、結果的にキャリアにマイナスの印象を残してしまうこともあります。段階を踏むことは、遠回りではなく、長く活躍し続けるための土台作りだと捉えてください。

6-2. 家族やパートナーとの合意形成も準備の一部

グローバル案件への移行は、業務内容だけでなく働き方そのものが変わることもあります。時差のある海外拠点との会議で早朝や夜間の対応が発生することもあり、生活リズムへの影響は事前に家族やパートナーと話し合っておくことをお勧めします。準備を進める段階から共有しておくと、実際に移行した後の摩擦を減らせます。

7. 移行にかかる現実的な期間の目安

僕が見てきた実例では、意識的に準備を始めてから2〜4年程度でグローバル案件のPMポジションに到達しているケースが多いという体感です。もちろん個人差は大きく、これは一律の相場ではありません。焦らず、着実に実績を積み上げる姿勢が、結果的に最も安定した移行につながります。

(結論)飛躍でなく、積み上げでグローバル案件に到達する

まとめます。①いきなり海外PMを狙うより、社内の海外拠点連携業務から段階を踏む方が現実的。②社内異動と転職は二者択一でなく並行して探るべき。③意識的な準備を始めてから2〜4年程度で到達する例が多い(体感値)。

もう一つ付け加えたいのは、段階を踏む過程で得られるのは実務経験だけではないということです。海外拠点のメンバーとの信頼関係、異なる文化への理解、時差を前提とした働き方への慣れ。これらは職務経歴書には書ききれない部分ですが、実際にグローバル案件のPMとして活躍する上での土台になります。

付け加えると、段階を踏む過程そのものが、実は面接で語れる貴重なストーリーになります。「最初は議事録担当から始めて、徐々に裁量を広げてきた」という積み上げの物語は、選考担当者に対して着実さと成長意欲の両方を伝える、説得力のある材料になります。

皆さんいかがでしたでしょうか。まずは15問のグローバルPM診断で、自分が今どの段階にいるかを確かめてみてください。では今日もがんばりましょう。

よくある質問

Q. 国内完結案件しか経験がなくてもグローバル案件に移れますか

移れます。ただしいきなり大きな海外案件を狙うより、まず社内の海外拠点連携がある小さな業務から関与し、実績を段階的に積み重ねる方が現実的で、結果的に早く到達できることが多いです。

Q. 転職と社内異動、どちらでグローバル案件に移るべきですか

どちらか一方に絞る必要はありません。社内に海外連携の機会があるなら異動を先に模索し、機会が乏しい場合は転職市場で直接グローバル案件のポジションを探すのが現実的です。両方の可能性を並行して見ておくことをお勧めします。

Q. 何年くらいでグローバル案件のPMになれますか

個人差が大きく一概には言えませんが、僕が見てきた実例では、意識的に準備を始めてから2〜4年程度でグローバル案件のPMポジションに到達しているケースが多いという体感です。焦らず段階を踏むことが結果的に近道になります。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

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